農地は自由に売買することはできません
1.土地の農地転用は自由にできるか?
農地を売却する場合、農地のままであれば、売却先は限られてしまいます。
当該農地が市街地に近い場合は、宅地などに転用すると用途が広がり、転用して売却しようと考える傾向があります。
結論からすると、農地転用は自由にできません。
農地は日本の食の自給率に関係する食の安全保障に関係するので、自由に宅地などに転用したり、売買することはできなくなっています。
農地の取引は、農地法という法律によって規制されていて、自由に売買したり、転用したりできないように規制されています。
農地の取引は、自由に転用できませんが、条件を満たして、手続きをすれば、転用も可能になります。
手続き方法としては、市街化調整区域外の農地については、都道府県知事の許可を得ることができれば、市街化区域の農地については、農業委員会の許可がもらえれば、農地の転用ができるようになります。
2.宅地などへの転用ができる農地
次の農地は、農地転用ができます。
第2種農地と第3種農地です。
(1)条件付きで転用が認められる第2種農地
第2種農地とは、生産力が低い未整備農地や市街化近郊の農地となります。
第2種農地を転用する時は、代替性が審査されます。ほかの農地を代わりに転用しても、問題がなければ、農地転用が認められないということになります。
第2種農地の農地転用に関しては、その農地を転用しなければならない理由を提出する必要があります。
(2)利益性が高いとされる第3種農地
第3種農地は、市街化区域内において、駅や公共施設などから300m以内にある農地ということになります。
第3種農地の場合、第2種農地のような代替性の審査はなくて、基本的には、農地転用は許可されることが多いです。
基本的には、第2種農地と第3種農地の両方とも、農地転用するためには、一般基準を満たさなければなりません。
一般基準とは、このようなことで判断基準とされます。確実に転用事業が行われること
や周辺農地の耕作の状況などに悪影響がないこと、そして、一時転用後は、農地に確実に復元されることです。
農地転用の申請する時は、このような基準を満たすことを証明する資料を提出します。
3.宅地などへ転用ができない農地
次のような土地は、原則として農地転用が認められません。
農用地区域内農地、甲種農地と第1種農地です。
(1) 農用地区域内農地
農用地区域内農地とは、農業振興地域整備計画に基づいて、生産性の高い農地として指定された農地で、この地域にある農地は、原則として、農地転用が認められません。
農用地区域内農地を転用するためには、農業振興地域からの除外の申請をする必要があります。
ただし、代替性や周辺農地への影響などの条件を満たすことは難しいのが現状です。
(2)甲種農地
甲種農地とは、市街化調整区域内の土地改良事業が8年以内に実施された農地のことです。
原則として、農地転用の許可を得ることはむずかしくなります。
農業用の施設などで、転用後の目的によっては、認められるケースもないことはありません。
(3)第1種農地
第1種農地とは、10ha以上の集団農地で、土地改良事業などの対象となった農地ということになります。
原則としては、農地転用の許可を得ることは困難ですが、甲種農地と同じく、転用後の目的によっては、認められることもあります。
これらの農地でも、一般基準を満たしていない場合には、農地転用の許可を得ることができませんので、一般基準を満たしているかどうかを確認する必要もあります。
農地の法律
農地を売買したり、転用したりする時は、農地法によって、規制を受けます。
1. 農地法とは?
(1) 農地法の目的
農地は食の安全保障にも関係していて、食糧自給率に関わるため、国にとって、農地は重要な土地と位置づけられています。
農地法では「農業者の権利を守るとともに、農業生産を促進し、国民に安定した食料供給を行うため、農地などの売買による権利移動や転用の制限」が規定されています。
農地の売買と農地の農地以外への転用の規制が、農地法のポイントです。
(2) 農地法の規制対象
農地法は、農地の売買と農地以外への転用を禁止しています。
土地には、地目が決められていて、農地とは地目が主に「田」や「畑」のものの場合ということになります。
ただし、農地法の規制対象については、地目ではなく、実際の利用形態が農地かどうかによって、判断されることに注意が必要になります。
休耕地なども農地となりますが、一般の家の庭で、野菜をつくなどの家庭菜園などは対象外となります。
2. 農地法による売買の制限
(1) 農地法第3条
農地法の売買の禁止事項は「第3条」に規定されていて、次のように記載されています。
「農地又は採草放牧地について、所有権を移転し、または地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権もしくは、その他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、もしくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。」
農地を売買したり、賃借したりする場合は、農業委員会の許可を得る必要があるということになります。
農業委員会の許可を受けずに、売買をした場合、その契約は無効となります。
(2) 第3条が適用されない場合
農地法第3条には続きがあって、次のケースでは適用を受けないと規定されています。
国や都道府県による取得、土地収用法による収容や相続
3. 農地法による転用の制限
農地の農地以外への転用を規制する農地法第4条です。転用の制限について、次のよう規定されています。
「農地を農地以外のものにする者は、都道府県知事(農地又は採草放牧地の農業上の効率的かつ、総合的な利用の確保に関する施策の実施状況を考慮して、農林水産大臣が指定する市町村(以下「指定市町村」)の区域内にあっては、指定市町村の長。(以下「都道府県知事等」)の許可を受けなければならない。」
売買の許可権者は農業委員会でしたが、転用の場合では都道府県知事あるいは指定市町村長となります。
市街化区域内にある農地については、農業委員会への届出制となっている場合もあります。
許可を受けずに農地を転用すると、原状回復命令などの行政処分となることがあります。
(1) 第4条が適用されない場合
次のような事例では第4条が適用されません。
小規模な農業用施設、国や自治体への供用や土地収用法に基づく収用です。
4. 転用と売買を同時に行う場合の制限
転用を前提とした農地の売却を規制する農地法第5条になります。
転用と売買を同時に行う場合は、第5条の規制を受けます。
「農地を農地以外のものにするため、または採草放牧地を採草放牧地以外のものにするため、これらの土地について、第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、または移転する場合には、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならない。」
農地を宅地に転用した土地を購入して、自宅などの住宅を建築するような場合は、許可を受ける必要があるということです。
許可権者は都道府県知事になりますが、市街化区域内にある農地は、農業委員会への届出となっています。
許可を受けずに、転用や売買を行った場合には、無効となって、原状回復命令などの行政処分を受けることがあります。
(1) 第5条が適用されないケース
次のような場合は、第5条が適用されません。
国や都道府県等が一定の施設用として供するために農地を取得する場合や土地収用法に基づいて収用される場合です。
5.登記について
農地は宅地とは違う規制があります。それは登記にも関係します。
農地が宅地と異なるのは、当事者間の契約だけでは所有権を移転させることができません。
農地は、契約だけでは所有権が移転しません。契約だけだと、所有者が変わると、譲り受けた方が、農地を農地として使用するかもしれません。農地の譲渡には、農業委員会等の許可が必要になっています。
農地法第3条第1項本文
「農地または採草放牧地について、所有権を移転し、または、地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくは、その他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、もしくは、移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。」
なお、農地について許可が必要となるのは、譲渡だけではなく、貸す場合も必要になりますす。
貸すことで、農地を借りた者が、その農地を宅地として利用することが考えられるので、それを防ぐ必要があるからです。
農地は自由に売買できない、厳しい条件がある
一般的に、国や地域によって異なってきますが、農地の自由な売買は制限されている場合が多くあります。
農地の適切な管理や保護、農業生産の持続可能性を確保するために行われる場合があるということです。
日本では農地法に基づいて、農地の売買には地方自治体の承認が必要になり、農地の転用(農業以外の用途に転用すること)には、国の承認が必要になります。
農地の適切な利用や食料自給率の維持を目的としています。
農地の売買においても、地域の農業者や農地所有者の意見を十分に反映するなど、公正かつ透明な手続きが要求されます。
一方で、一部の国や地域においては、農地の自由な売買が認められている場合もあります。
ただし、これらの場合であっても、農地の管理や保護、農業生産の持続可能性などが確保されるよう、適切な規制や手続きが行われることが求められることが多くあります。