2022年に営農義務が解除されました!

65歳の誕生日までに、条件を満たして後継者または第三者に貸し付けた場合、農業者年金受給手続

農地コラム

農業者年金は、加入者自らが積み立てた保険料とその運用益を年金の原資として年金額が決まる確定拠出型の積立て年金です。年金財政が現役世代と引退世代の人口比の影響を受けないのが特徴になっています。

他人に貸し付けたり、転用する場合には注意点がいくつかあります。

農業者年金制度

1.加入条件

農業者年金は、次の要件をすべて満たす人であれば、農地を持っていない農業者でも家族従業者でも加入できます。

・国民年金の第1号被保険者

・年間60日以上農業に従事する人

・20歳以上60歳未満の人

2.保険料の財政方式

この保険料の財政方式は、積立方式になっています。将来の年金受給に必要な原資をあらかじめ、自分で積み立てて、運用実績によって受給額が決まります。

加入者や受給者の人数に影響されないので安定した年金制度となっています。

収めた保険料総額と運用益を基礎としていて、この年金を農業者老齢年金という名称になっています。

加入者全員が65歳から無条件で受給できます。国民年金と同じく、希望によって60歳からの繰り上げの受給も可能です。

3.保険料

月額の保険料は、20,000円を基本にして、最高67,000円まで、1,000円の単位で自由に決められます。

経済的な状況や老後の設計などによって、いつでも見直すことができます。

余裕がないのであれば、積み立てをしないで、余裕が出てきたときに、余計に積み増しすることも可能になっています。

4.年金の受給

農業者年金は、80歳までの保証がついた終身の年金となっています。

たとえ、加入者や受給者が80歳になる前に、亡くなった場合であっても、死亡した月の翌月から80歳までに受け取れるはずの年金を予定の利率で割り戻した額を死亡一時金として遺族に支給されます。

5.税金のメリット

保険料は、最高804,000円の全額、所得税、社会保険料控除の対象になります。

受け取る年金についても、公的年金などの控除の対象になります。個人年金の場合には、控除額の上限は50,000円になります。

6.保険料の助成

認定農業者や青色申告者などの一定の要件を満たして、意欲のある農業の担い手であれば、政策支援の対象となって、一定の期間について日本国の保険料助成を受けられます。

助成を受けた保険料と運用益を基礎とする年金が、特例付加年金となっています。

特例付加年金は、農地、採草放牧地および農業用施設の権利移転などを行って、農業経営者でなくなれば、受給することができます。

7.現況届

現況届は、農業者年金を受給している人が生存しているかどうか、また、経営移譲年金については、農業の再開や農地などの返還がなされていないかどうかなどを確認するための届出となっています。

用紙は毎年5月下旬ごろに、農業者年金基金から各人へ送付されます。

農業者年金を受給されている人は、本人が原則ですが、本人の署名が困難な場合は、代理人の署名などを署名して、毎年6月ごろまでに現況届を農業委員会に提出します。

提出がないと年金の支払いが差し止めとなりますので注意が必要です。

8.各種手続き

加入の申込、裁定請求の手続き、住所、氏名の変更、被保険者および受給権者の死亡などの時には、各種手続きが必要になります。

後継者または第三者に貸し付けた場合

農業の後継者に貸し付けて、経営移譲、経営継承した農地など、特定処分対象農地等の場合、全部または一部が返還された場合には、基本的には、返還を受けた日の属する月の翌月から経営移譲年金、特例付加年金が支給停止となります。

旧制度の経営移譲年金を受給されていた人には、特例支給の農業者老齢年金が支給されて、新制度の受給者については、農業者老齢年金が引き続き支給されます。

この措置は、特定処分対象農地などについては所有権が留保されていて、経営移譲後において、特定処分対象農地等が親に返還されて転用されるなどした場合、後継者の農業経営の安定に支障をきたして、当初の目的である農地保有の合理化に反する事態が生ずることが懸念されることで、このような事態の発生を防止する必要があるためです。

特定処分対象農地などの返還を受けた場合であっても、次の理由に該当する場合には、農地保有の合理化の見地からして、不適当とはいえないために、経営移譲年金などの支給は停止されないこととなっています。

その場合には、特定処分対象農地などの返還届出および、特定処分対象農地等処分届を提出する必要があります。

返還を受けた農地などについては、面積などの制限があるものもあるので注意が必要です。

・市町村作成の農用地利用集積計画などに従い、農業者年金加入者などの特定譲受者に対して権利の移転または、設定を行う場合。

・第三者または、他の直系卑属に対して、経営移譲をやり直した場合。

・特定処分対象農地などの買い換え、借り換えをする場合。

・農業用施設、農産物の加工、販売などの施設を含む用地にする場合。

・経営移譲を受けた後継者の宅地とする場合。

・次、三男などの住宅用地とする場合。

・受給権者の住宅が土地収用該当事業用地となったことなどによって、受給権者の住宅用地とする場合。

・体験農場、ふれあい体験宿泊施設、公民館その他の集会施設、公園、広場、集落道、下水道施設などにする場合。

・地方公共団体が作成する計画に従って整備される就業の機会の増大に寄与する工場、流通業務施設、商業施設、伝統工芸館、郷土資料館、都市農村交流のためのスポーツ・レクリェーション施設など。

・後継者が障害状態になったり、土地収用該当事業などのために収用または、使用されるようなやむをえない場合。

・土地収用事業のために、収用または、使用される土地の代替地として提供する場合。

・災害によって耕作を行うことが著しく困難となった場合または、災害時に鉄道、ガスなどのライフライン、応急仮設住宅などの敷地として提供する場合。

・農作物の生産の調整や国土の保全のための植林をする場合。

・砂利採取、試験研究などのため3年以内のあいだ、一時的に転用する場合。

後継者に農地等を貸し付けて経営移譲した受給者

農業者年金受給中の人で、経営移譲年金受給中の人は次のことに注意が必要です。

1.支給停止となる場合

・後継者に農地などを貸し付けて、経営移譲した受給者が、その貸し付けた農地など、特定処分対象農地などの全部、または一部を農地保有の合理化からみて、不適当な処分のため返還を受けたとき。

・受給者が農地などについて、農業経営を再開したときなど。

2.支給停止にならない場合

・土地収用法の該当事業などで農地を処分するとき。

・買換えや交換をするとき。

・後継者が自ら居住するために必要な住宅の用地(宅地)に転用するとき、特定処分対象農地などの2割以内に限られています。

・後継者以外の直系卑属の分家住宅用地、累計で10アール以内に農地転用するとき。

・農業用施設用地に転用するとき。

・農用地利用集積計画によって特定の農業者に農地の権利の設定移転をするとき。

・経営移譲の相手の者を変更するとき。