農地の一時転用とは、本来は農業用に利用されている土地を、一定期間だけ農地ではなく、別の目的で利用することです。一時転用によって、農地を無駄にせずに有効に活用することができます。
農地は、期間限定の一時転用として申請することができます。一時転用の期間は、自治体によって異なりますが、一般的には最長で3年程度とされています。
期間が終了すると、農地は元の農業用途に戻されるために、転用後の農地の復旧計画も必要になります。
一時転用を行う場合は、自治体が指定する手続きに従って、申請を行います。
農地転用とは
一般的な農地転用とは、農地を農地以外の土地にすることで、耕作の目的の土地を耕作の目的以外の土地に転用することです。
耕作の目的の土地には、現況において耕作されている土地はもちろんですが、耕作されていなくても、耕作しようとすれば、いつでも耕作できるような土地である休耕地や不耕作地も含まれています。
農地転用については農地法が関係しています。 直接に農地転用を規制するのは、農地法4条と5条になります。 「農地を転用するには原則として都道府県知事又は指定市町村の長(以下都道府県知事等)の許可が必要である」と規定されています。
農地の一時転用
農地の一時転用とは、砂利採取、建築現場の事務所、資材の置き場、臨時の駐車場、建設残土などの埋め立てなどのために、一定期間、耕作以外の目的に使用することです。農地を一時的に農地以外として利用することです。
このような目的が完了した後には、元通りに農地にもどすことになりますが、この一時転用も農地法に基づいて、転用許可が必要となります。
一時転用の具体例
農地の一時転用の具体例としては、次のような事例があげられます。
・建築現場の周辺に資材の置場を設置するとき
・イベントなどの会場の付近に、臨時駐車場を設置するとき
・地質の調査などを行うとき
・土砂や砂利などの採取を行うとき
・ソーラーパネルや風力発電所の設置のとき
・果樹園や園芸施設の設置のとき
1.資材置場などの転用による一時転用について
一時転用許可の期間満了後は、事業継続の必要性などで、恒久の転用許可申請をする場合には、許可内容どおり事業に供されていて、以後の利用についても、永続性が認められるなどの要件が必要になります。
原則として許可期間は3年以内が限度ですが、農用地区域外の農地であって、事業の詳細な工程の計画などによって必要性が認められるものについては、3年を超えて、必要最小限度の期間まで許可できる場合もあります。
ただし、期間満了後は、農地に復元しなければなりません。
2.農地の造成による一時転用について
以前の農地より、作物の育成に適する土壌や高い利用価値がある農地に復元できて、農業経営の改善に役立つものでなければならないとされています。
許可の期間は必要最小限で3年以内が限度になります。
ただし、農用地区域外の農地で、期間を変更する場合は、期間満了日から起算して、1年を超えて申請することはできません。
農用地区域内の場合については、3年を超えて期間を延長することはできません。
その他、天地返しのための掘削については、地盤面からおおむね1.5m以内となっています。覆土については、原則として、1m以上です。
一時転用の申請手続き
農地の一時転用の申請手続きは、一般的な農地転用の申請手続きと同じですが、申請書に工事完了日を記載して、その日までに農地に復元することが条件で、工事の進捗状況や完了報告も義務となっています。
申請は、農業委員会へ申請します。農業委員会は、農地法に基づく売買や貸借の許可、農地転用案件への意見の具申、遊休農地の調査や指導などを中心に、農地に関する事務を執行する行政委員会として市町村に設置されています。
一時転用も申請などのできる期間は、一般的な農地転用と同じになります。農業委員会に前もって申請期間を確認して、期日内に申請します。
市街化区域内ある農地の一時転用は、事前に届出をすれば、許可は不要となります。
このように、一時転用であっても、農地転用と変わりありません。
農業委員会と事前協議を行って、転用可能か調査して、正確な申請書類を作成することが必要となります。
砂利採取の際の認可など、一時転用特有の許可が必要なる場合もあるので、確認する必要があります。
一時転用は、農地に戻すことが前提となっています。一時転用の事業計画は、正確に、綿密に作成します。
一時転用の場合に必要な書類
(1)共通
農地復元誓約書
(2)砂利、土、岩石採取事業に関係する一時転用の場合
・登録業者通知書、土地目録、見取図、平面図および縦横断図
・農地復元計画書、計画図
・農地復元の履行保証契約
・工事工程表
(3)農地造成の場合
・事業経歴書
・埋立て等計画平面図
・現況および計画縦横断図 掘削深および覆土高が分かるもの
・作付け計画書
・作付け誓約書
・契約書の写し
・工事工程
・市町村長の意見書
・農地以外の土地の所有者などの同意書
(4)営農型太陽光発電の場合(太陽光発電に係る書類以外)
・営農型発電設備の設計図
・下の農地における営農計画書や当該農地における営農への影響の見込み書
・支柱などを含む設備の撤去費用の負担者や概算額がわかる書類
許可基準
許可にあたっては、その利用に供された後に、その土地が耕作の目的に供されることが確実かどうかを審査して、判断されます。
一時転用をするには、農地の所有者が申請を行う必要があります。申請には、自治体が指定する書類が必要となり、その書類には、一時転用の期間や利用の目的、利用の料金、転用後の農地の復旧計画などを記載します。
原則として、一般的な「農地転用」の基準に該当すること、一時転用後は、すぐに農地に回復すること、農地法第5条許可の場合については、所有権の取得はできません。
一時転用できる期間は、目的を達成するために必要な最低限の期間とされています。
許可が下りた場合の条件等は、次のとおりとなります。
1.転用期間
転用の期間は概ね1年、最長でも3年以内です。
農用地区内の農地の一時転用や農地造成のための一時転用は3年以内とされています。
営農型太陽光発電も一時転用となりますが、その期間は原則3年、(更新はあります)、一定の条件を満たす場合であれば10年以内となります。
2.農地造成
農地造成とは、その土地の営農の条件の改善のために、土地の形質の変更を行って、その後に農地に復元することです。一時転用許可期間は、3年以内です。
条例などの規定を満たしている建設発生土等を使うことができますが、その場合は、作物の育成に適する土で、原則として1メートル以上の覆土を行うことになります。
農地造成後に作付けを行う旨を、誓約することになります。
一定程度以上の埋立てを行う場合は、産業廃棄物指導課などへの許可申請が併せて、必要となります。
また、事前協議が必要となります。この事前協議が完了した後に、農業委員会への一時転用許可申請を行います。
一定の要件を満たす場合は、軽微な農地改良として、一時転用許可申請に代えて、農業委員会への届出を行う場合もあります。
3.営農型太陽光発電設備設置
営農型太陽光発電設備とは、農地に支柱を立てて、営農を続けながら、農地の上部空間に太陽光発電設備を設置するものです。
ただし、メガソーラーなどの農地に太陽光発電設備を敷き詰め営農ができなくなる場合などは、一時転用許可ではなく、一般的な恒久転用許可となります。
農用地区域内農地の取り扱い
農用地区域内の農地の恒久的転用許可はできませんが、次の場合に限って、一時転用が許可されます。
・一時転用の期間が3年以内であること
・当該の土地が、周辺の他の土地での代替えができないか、もしくは不適当であること
・農業振興地域整備計画の達成において支障がないと認められること
罰則
許可を受けずに農地の転用を行った場合は、罰則も規定されています。
・偽り、その他不正の手段により許可を受けた場合
3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(法人は1億円以下の罰金)
・県知事の工事の中止、原状回復などの命令に従わなかった場合
3年以下 の懲役又は300万円以下の罰金 (法人は1億円以下の罰金)
一転用の相談
行政書士は、農地転用の専門家になります。農地の転用には、さまざまの法律が関係しており、手続きが進まないことがあります。
たとえば、市街化調整区域にある農地を転用する時の許可申請は難しく、専門的な知識と時間が必要になります。
煩雑な手続きの書類の作成や農地転用の為の準備などの相談相手として、行政書士に相談にのってもらうこともできます。