今では耕作をしていない田畑を所有していて、その田畑の土地を宅地にして家を建てたいというよくあるケースです。
1.地目について
田畑は、農地という地目であるために、この地目を宅地に変えることになります。
地目とは、不動産登記法によって、その土地を総合的、客観的に判別して、認定した土地の用途のことです。 地目を設定する時は、土地の現況や利用目的によって判定されます。 23区分あります。
これらの地目には、法的に決められた用途があって、届出なしには田畑を宅地にすることはできません。
2.農地と宅地の違い
農地に家を建てる場合、まず、農地と宅地の違いを理解しておきます。
農地:農作目的です。
宅地:住宅を建てるのが目的です。
農地に家を建てられませんので、土地の目的である地目を宅地に変更します。
この変更を農地転用と言います。
ただし、例外として地目が農地のままでも家を建てることができる例外もあります。
当該の土地の地域が都市計画法によって、どのような区分に分けられているのかによって変わってきます。
都市計画法とは、都市の健全な発展と秩序ある整備を図って、国土の発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的にした法律です。都市計画を、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用、道路や公園、水道、学校等の都市施設の整備および市街地開発事業に関する計画と定義しています。
3.都市計画法で定められた3つの区域とは
(1) 市街化区域
住宅を建ててもよい地域です。家で市街化にする地域とも言えます。
よって、農地が市街化区域にある場合であれば、地目が農地のままでも家を建てることができます。
(2) 市街化調整区域
許可がおりれば、家を建ててもよい地域です。
この地域は、なるべく農地を残すために指定された地域です。
農地が市街化調整区域にある場合であれば、農地転用の手続きをして、許可が出なければ家を建てることはできません。
市街化区域よりも農地に家を建てるハードルが高くなります。
さらに、その場所や周辺の環境によって、そのハードルも違ってきます。
(3) 農用地区域
原則的に農業以外には使えません。
この地域は、農地を残す土地として、宣言された場所です。
農用地区域は原則として家を建てることはできません。
ただし、除外申請をすれば、家を建てることができます。自治体によって条件が違ってきますので、当該の自治体で確認する必要がありますが、いずれにしても、農地から住宅への農地転用のハードルが一番高くなります。
また、田畑だった農地を、家が建てられるようにするには、地目を変更するだけでなく、地盤改良工事や水道および下水などの新設工事が必要な場合が多くあります。費用と時間がかかることがあります。
4.農地に家を建てる手順
農地を宅地に変更するには行政的な手続きが必要です。
都道府県知事の許可を得ない限り、無断で家を建てることはできません。
農地を宅地にするためには、農地転用の手続きを行います。農地と言っても、稲作用とか畑というように種類があるので、申請する前に確認しておきます。
申請手続きは、数カ月かかる場合もあるので、できるだけ早めに申請しておいたほうがよいでしょう。この手続きは、行政書士などに依頼することもできます。
5.農地を宅地にする場合のポイント
農地の中には、宅地への転用が認められるのに苦労をしたり、認められないものがあります。
具体的には、市街化調整区域や農用地区域内農地がそれにあたります。
市街化調整区域とは、市街化を抑制する地域です。住宅や商業施設などを建築することは原則として認められていない場所です。
農振農用地区域内農地とは、農振法に基づいて市町村が定める農業振興地域整備計画において、農振農用地区域とされた区域内の農地のことです。
農地転用は、原則として、不許可となります。転用する場合は、一時的な利用などを除いて、原則として、農振農用地から外す手続が必要となります。
農用地区域内農地は、農業振興地域整備計画に基づいて定められた土地で、農地として生産性が高いとされています。
自治体にとって重要な土地であるために、原則として農地転用が認められません。
市街化調整区域内の土地については、簡単に農地転用できるとは限りません。
農用に必要な建物以外は、原則として、建てられませんので、例えば、農家の方が住む家などが対象となり、認められやすくなります。
一般的に、農地を宅地に転用することは簡単ではありません。土地の利用規制や法律によって、農地を宅地に転用することができる場合とできない場合があります。
日本の場合、農地の利用に関する法律に基づく農地の転用には、農業委員会の許可が必要です。
また、農地の転用には、次のような条件が課せられることがあります。
・転用前に、農業委員会による調査が必要。
・転用後に、一定期間の農業用途への利用義務があります。
・転用後の土地の面積、形状、地勢、環境、利用方法などについて、農地保全の観点から制限があります。
・転用に伴い、農地税が増加する可能性がある。
よって、農地を宅地に転用するには、多くの手続きや条件を満たす必要があります。
農地の利用制限が厳しい地域では、転用が困難な場合があります。詳細は、地方自治体の担当窓口や行政書士などに相談したほうがよいでしょう。
農地法第4条の適用場面とは?
1.条文で概要をみる
以下は農地法第4条の条文です。
「農地を農地以外のものにする者は、都道府県知事(農地又は採草放牧地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に関する施策の実施状況を考慮して農林水産大臣が指定する市町村(以下「指定市町村」という。)の区域内にあっては、指定市町村の長。以下「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。」
農地法第4条は農地」対象としています。農地法第3条や農地法第5条では対象となる採草放牧地は含んでいません。
農地法第4条が適用される場面としては、農地を農地以外のものにする者と規定されています。
農地を農地以外のものにするとは、農地を住宅地や駐車場などに転用する時は、農地法第4条の許可が必要になりますということです。
さらに、自分の農地を自分で転用する場合ということになります。
自分の農地を他人が転用する場合は、農地法第5条が適用されます。
農地法第4条の許可権者としては、都道府県知事となります。
農地又は採草放牧地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に関する施策の実施状況を考慮して農林水産大臣が指定する市町村の区域内にある農地については、指定市町村の長が許可権者となります。
4ヘクタールを超える農地を転用する場合は、農林水産大臣との協議が必要となっています。
2.農地法第4条の許可要件
農地法では、優良農地を確保するために、農地の優良性や周辺の土地の利用状況などによって農地を区分して、農業上の利用に支障が生じる恐れの高い農地は原則転用不可にして、反対に生じる恐れの少ない農地は原則転用許可となっています。
(1) 立地基準
農用地区域内農地は、原則として不許可です。
農用地区域内農地は、市町村が定める農業振興地域整備計画で農用地区域とされた区域内の農地です。
農業地区域内の農地は今後10年以上にわたり農地として利用するものとされています。
転用は厳しく制限され、転用する場合は農用地区域内からの除外申請をして許可をもらわなければなりません。
甲種農地も原則不許可ですが、例外で許可もあります。
市街化調整区域内にある農地で、土地改良事業などの対象の農地など、良好な営農条件の農地です。厳しく制限されていますが、次の例外規定に該当する場合は許可となる場合があります。
・農業用施設、農産物加工・販売施設
・土地収用事業の認定を受けた施設
・集落接続の住宅等(500㎡以内)(甲種農地・第1種農地以外の土地に立地困難な場合)
・地域の農業の振興に関する地方公共団体の計画に基づく施設
・農村産業法、地域未来投資促進法等による調整が整った施設
第1種農地も原則不許可ですが、例外として許可されることもあります。
農用地区域内にある農地以外の農地で集団的に存在して良好な営農条件の農地です。
これも、例外規定があります。
・農業用施設、農産物加工・販売施設
・土地収用の対象となる施設
・集落接続の住宅等(甲種農地・第1種農地以外の土地に立地困難な場合)
・地域の農業の振興に関する地方公共団体の計画に基づく施設
・農村産業法、地域未来投資促進法等による調整が整った施設
第2種農地は、第3種農地に立地が困難な場合などに許可されます。
農用地区域外の農地であって、市街地の区域または、市街地化の進展が著しい区域にある農地です。
近隣の第3種農地に立地することができない場合などでは、原則許可となります。
第3種農地は、原則的に、許可されます。農用地区域外の農地であり、市街地の区域または市街地化がすすんでいる区域にある農地です。
農地法の第4条は、農地の所有者や承継者が、自らの意思によって農地を耕作することを義務付けています。この条文は、農地の農業用途の維持という農地法の基本原則を明確にして、農地を所有する者が、自らの責任で農業を営むことを要求しています。
なお、農地法第4条によって農地の耕作を義務付けられた者は、農地を自らの意思で農業目的で使用することが求められますが、具体的な農業の方法や経営方針については、自由に決定できます。