農業経営基盤強化促進法で農地の利用権を設定して、所有権の移転をする場合は、農業委員会の事務局で手続きをします。
農地の売買、農業経営基盤強化促進法による所有権移転
1.農地の売買
農地を売りたい人と農地を購入して、経営規模を拡大したい農業者の方への情報になります。
農地を耕作の目的で売買するには、農地法の許可を受けるか、農業経営基盤強化促進法による手続きを取るかのどちらかになります。
農業経営基盤強化促進法とは、効率的で、安定的な農業経営を育成する目的を実現するために、農業経営の規模拡大、生産方式や経営管理の合理化などをすすめる意欲のある農業経営者、認定農業者を支援するために、国が平成5年に制定したものです。
いずれの場合も農業委員会で手続きをしないと農地の所有権移転はできません。
(1) 農地法の場合
売買できる農地は、特に要件はありません。
買受者の要件は、50アール以上の経営面積があること、山間部は30アールです。
経営農地をすべて適切に管理していること。150日以上の常時農業従事者などです。
詳しくは農業委員会までご相談ください。
(2)農業経営基盤強化促進法
売買できる農地は、農業振興地域農用地区域内の農地になります。
買受者の要件は、認定農業者であること。かつ2.6ヘクタール以上の耕作面積がある担い手の農業者であること。
農業経営基盤強化促進法による所有権移転は、優良農地、農業振興地域農用地区域内農地を意欲ある農業の担い手に、効率よく集積していくことを目的としています。
この制度を活用すると、次のようなメリットがあります。
2. 農業経営基盤強化促進法による所有権移転のメリット
(1) 農地法
売る方には譲渡所得税の軽減はありません。
買う方の所有権移転登記は、許可後に申請者が行います。司法書士に依頼する場合もありますが、その場合、依頼費用がかかります。
買う方の登録免許税の軽減は、特にありません。
買う方の不動産取得税の軽減は、特にありません。
(2)農業経営基盤強化促進法
売る方は譲渡所得税の軽減として、売買価格から800万円の長期譲渡所得税控除があります。
ただし、国保税は軽減判定に影響がある場合があります。
買う方の所有権移転登記ですが、農業委員会事務局の職員が行いますので、司法書士への依頼費用はかかりません。買い手が登録の免許税を負担します。
買う方の所有権移転登記ですが、1,000分の20から1,000分の10に軽減されます。
買う方の不動産取得税の軽減は、当該土地の価格から3分の1を軽減されます。
農地を売る者、農地を取得する者の両方が、要件を満たしている場合、農業経営基盤強化促進法による所有権移転をする場合、譲渡人、譲受人の両方にメリットがあります。
3.買受者の要件
(1)認定農業者であることが条件です。農地所有適格法人でも可となっています。または、同等の集積の実績を持つ担い手農家となります。
(2)経営の面積が2.6ヘクタールを超えていること。
(3)売り手を指定しないこと。農地流動化委託申出書を提出すること。
4.売り手の要件
買い手を指定しないこと。農地流動化委託申出書を提出すること。
これらの要件を満たしていれば、農業経営基盤強化促進法による所有権移転の手続きをして譲渡人、譲受人の両方が税の優遇などの恩恵を受けることができます。
5.農業経営基盤強化促進法によって所有権移転ができない農地について
次のひとつでも該当する農地は、農業経営基盤強化促進法による所有権移転ができないので注意が必要です。
・抵当権やその他の権利が設定されてしまっている農地。
・所有者の死亡、相続が完了していない農地。
・受け手が経営農地の中に耕作放棄地がある場合。
・農地転用や転貸が目的の所有権移転。
・農業振興地域内農用地以外の農地。
・農地集積に貢献していないと思われる場合。
などがあります。詳細は農業委員会と相談してみてください。
6.農地の所有権を移転する
農地を売買したり、贈与、貸し借り、交換などをする時は、農業委員会の許可が必要になりますので、農業委員会の事務局に申請します。
なお、次に該当する場合には、申請が許可されませんので注意が必要です。
・農業機械の確保の状況などから権利を取得しようとする者または、その世帯員などが、耕作の事業を行うと認められない場合。
・法人の場合、農地所有適格法人の条件を満たさない場合。ただし、解除条件付の使用貸借権または、賃借権の設定である場合は許可される場合もあります。
・権利を取得しようとする者または、その世帯員が、耕作に必要な農作業に常時従事すると認められない場合。
・所有権以外の権限で耕作している人が転貸しようとする場合。
・経営内容および農地の位置や規模からして、周辺地域における農地の農業上の効率的で総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがある場合。