農地法第3条の農地の権利設定や移転手続きについて、公共団体による収用、公共的な事業などのために農地を収用する場合は、許可申請は不要です。
土地収用制度について
土地収用制度は、公共の利益の増進と私有財産との調整を図ることを目的として制定されました。
土地などを収用、または使用するための手続や損失の補償の内容などが定められています。
道路、河川や公園などの公共事業のために、土地を取得する場合は、通常は事業を施行する者である起業者が土地の所有者と話し合って、任意に契約を締結します。
補償金額などが折り合わない場合や、土地の所有権について、争いが生じている場合など、話し合いによって、任意では、土地を取得することができない場合もあります。
そのような場合、起業者が、土地収用法に基づく手続をとることによって、公共事業に必要な土地を取得することができる制度を土地収用制度と言います。
この土地収用制度を活用する場合の基本的な法律となる土地収用法は、昭和26年に制定された法律で、事業の認定手続の透明性などの向上や収用裁決関連手続の合理化を図るために、平成13年に改正が行われました。
改正点は次のとおりです。
(1)起業者による事前事業説明の義務化
(2)公聴会の開催の義務化
(3)事業の認定理由の公表
(4)土地や物件調書作成の特例の創設
(5)補償金の払渡方法の合理化
(6)補償金の仲裁制度の創設
公共事業については、民間でのコスト意識の高まりや経済の活性化の観点から公共用地の早期取得も含めて、事業効果の早期発現を図っていく必要があると言われています。
農地を収用する場合の注意点
農地を収用する場合は、行政手続きや手続きに関する法律に従う必要があります。以下に、収用の時の注意点を示します。
収用対象の農地が公共の利益に合理的に必要であることを確認する必要があります。具体的には、道路や公園などの公共施設の建設や、災害復旧などが該当します。また、収用の理由が明確であることが求められます。
農地収用には、農地法や国土利用計画法などの法律に基づき、行政手続きを進める必要があります。収用手続きには、地方自治体や国土交通省などの関係機関が関わることがあります。
国土利用計画法とは、計画的な国土の利用を図るための法律で国土形成計画法とともに総合的な国土の利用や保全を推進するための枠組みなどを定めています。
国土利用計画法が定める規定は、土地利用計画の策定と土地取引の規制に分かれています。土地利用計画の中心となるのは、都道府県ごとで作成される土地利用基本計画であり、全国を、都市地域、農業地域、森林地域、自然公園地域や自然保全地域の5つの類型に区分しています。
収用に際しては、補償が必要になります。農地の所有者に対して、公正、かつ合理的な補償を行う必要があります。具体的には、農地の評価額に基づく金銭補償や、代替地の提供などが考えられます。
農地を収用する場合は、周辺住民や地元農業者などに配慮する必要があります。収用によって生じる影響や、補償に関する情報を適切に提供することが重要です。
このように、農地を収用する場合には、法律や手続きに厳密に従って、公正、かつ合理的な補償を行いながら、周辺住民や地元農業者との調整を図る必要があります。
公共事業のために土地を譲渡した場合の譲渡所得の課税
個人が公共事業のために土地を譲渡した場合は、譲渡所得の課税について、特例を受けることができます。特例の適用を受けるために一定の要件を満たす必要があります。
土地所有者が、公共事業の施行者による土地の買取りの申出などに応じて、施行者と土地売買契約などを締結して、事業施行者へ土地を譲渡する場合ですが、この場合の施行者が行う公共事業は、事業施行者による土地の買取りの申出を土地所有者が拒む時、土地収用法や都市計画法等の規定によって、その土地を強制的に取得できる事業であることが必要になります。この譲渡を収用などによる譲渡といいます。
個人が公共事業のために土地を譲渡した場合、譲渡所得の税額計算で、その土地の譲渡に係る対価補償金につき、特別控除として5000万円を控除することができます。租税特別措置法に定める収用交換等の場合の譲渡所得等の特別控除の特例です。
この特例の適用を受けるには、次の要件を満たす必要があります。
・譲渡所得の対象とならない土地でないこと。
・収用による土地の譲渡であること。
・その年中に、租税特別措置法に定める収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例および交換処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例の適用を受けないこと。
・同一事業において複数回の土地の譲渡があった場合、最初の譲渡に限られること。
・その土地で、公共事業の施行者から最初に買取りの申出を受けた者であること。
・土地の買取り申出から6か月を経過した日までに譲渡するものであること。
特別控除の金額は、同一年では他の特別控除と合算して5000万円が限度です。