農地などの賃貸借の当事者は、農業委員会の許可を受けなければ賃貸借の解除をすることはできません。
ただし、合意解約や農事調停による解約などの場合には、許可は必要ありませんが、農業委員会への通知が必要になります。
賃貸借契約書を確認して、解除や解約に関する条項や期限などを確認します。契約書に従い手続きを行う必要があります。
解除や解約をする旨を地主または借地人に申し入れます。書面での申し出が必要な場合があり、解除、解約の期限や手数料などに関する協議が必要な場合もあります。
・地方自治体への届け出
一部の自治体では、賃貸借契約解除の届け出が必要とされています。届け出に必要な書類などは、各自治体の条例によって異なるため、所轄の自治体に確認する必要があります。
農地または、採草放牧地の場合、農地委員会に届け出が必要となります。届け出に必要な書類や手続きは、各都道府県によって異なるため、所轄の農地委員会に確認をします。
農地の貸借契約を解約するとき
1.解約の許可
農地の賃貸借契約を解約する場合は、許可を受けなければなりません。
農地の賃借権を解約する場合には、農業委員会の許可が必要になります。
多くの市町村では、一般的に解約の申し入れなどをしようとする日の数か月前までに申請するようになっています。
期間満了の1年前から6ケ月前までに更新しない旨の通知をしない場合は、従前の条件で更に賃貸借をしたものとみなされます。
(1)許可の基準
・賃借人が信義に反した行為をした場合
・農地などを転用することが相当な場合
・賃貸人の自作を相当とする場合
ただし、次のような場合では、許可を受ける必要はありません。農業委員会に解約の連絡を提出します。
(2)許可が必要ない場合
・書面による合意解約
合意解約が成立したとき、農地を引き渡す前6ケ月以内の必要があります。
・農事調停による合意解約
農事調停とは民事調停法によるもので、利用関係の紛争に関する調停のことです。裁判所に申し立てをする必要があります。
・10年以上の期間の定めのある賃貸借で、賃貸借の更新しない旨の通知をした場合。
・賃貸借契約の合意解約通知
ただし、農業委員会に解約の通知をする必要がある場合もあります。(農地法第18条第6項)
・使用貸借契約の合意解約手続
賃借料の支払いがない場合には、農地使用貸借解約通知書を農業員会に提出します。
(3)手続きの際に必要となる書類など
・農地法第18条第1項許可申請書
・登記簿謄本(全部事項証明書)
・賃借契約書の写し(ある場合)
・位置図
・許可できる場合(法第18条第2項の規定)に該当する理由が確認できるもの
・農地法第18条第6項通知書
・登記簿謄本(全部事項証明書)
・農地賃貸借合意解約契約書
農地法第18条の農地の賃貸借の解約等の制限
農地などの賃貸借の当事者は、農業委員会の許可を受けなければ、賃貸借の解除等をすることはできません。
ただし、合意解約や農事調停による解約などの場合は、許可はいりませんが、農業委員会への通知が必要になります。
1.許可の対象
・農地等の賃貸借の解除
・解約の申し入れ
・合意による解約
・更新拒絶の通知
2.許可不要の場合
・合意による解約、ただし、土地引き渡し前6ヵ月以内の書面上明らかなケースになります。
・解約をする権利を留保しているものなどを除いた10年以上の期間の定めのある賃貸借の更新拒絶の通知
・水田裏作を目的とする賃貸借についての更新拒絶の通知を行う場合
3.許可の判断基準
次のいずれかに該当する場合に許可されます。
・賃借人が信義に反した行為をした場合
・農地などを転用することが相当な場合
・賃貸人の自作を相当とする場合
・遊休農地などの賃借人が農業委員会から機構との協議勧告を受けた場合
・農地所有適格法人の要件のない法人から貸付地の返還を受ける場合
・その他正当な事由などがある場合
これらの場合以外であっても、たとえば、賃借人から解除する場合、賃借人が離農する場合、農地を適正で効率的に利用していない場合など、解約を認めることが相当な場合は許可されます。
農業委員会
農業委員会は、主たる使命である農地などの利用の最適化、担い手への農地利用の集積や集約化、遊休農地の発生防止や解消、新規参入の促進を中心にして、農地法に基づく農地の売買や貸借の許可、農地転用案件への意見の具申など、農地に関する事務を執行する行政委員会として、市町村に設置されています。
1.必須の事務
・農地法などによって、その権限に属させられた事項である農地の売買や貸借の許可、農地転用案件への意見具申、遊休農地に関する措置など
・農地などの利用の最適化の推進
2.任意の事務
・法人化その他、農業経営の合理化
・農業一般に関する調査や情報の提供
3.農業委員会の設置基準
原則として市町村に1つ設置されます。
(設置の例外)
・農地のない市町村には、農業委員会を置かないことになっています。
・農地面積が著しく小さい場合、都府県200ヘクタール以下、北海道では800ヘクタール以下の市町村では、置かないことができます。設置するかどうかは市町村が選択できます。
・市町村面積が著しく大きい、24,000ヘクタールを超える、または、農地面積が著しく大きい場合、7,000ヘクタール超えの市町村には、区域を2以上に分けて、その各々の区域に農業委員会を置くことができます。
4.設置の意義
・農地などの利用の最適化を推進する機関として位置付けされています。
・農地制度に関する業務執行の全国的な統一性、客観性が確保されます。
・市町村長から独立した行政委員会として、公平で中立的な事務を実施できる。
5.農業委員会の運営
農業委員会は、市町村長が議会の同意を得た上で任命した農業委員で組織されて、農業委員は、合議体としての意思決定、農地の権利移動の許や不許可の決定などを担当します。
農業委員会は、農地利用最適化推進委員を委嘱して、推進委員には、担当の区域における農地などの利用の最適化の推進を担当します。
6.農業委員と推進委
(1)農業委員
農業に関する識見を有しており、農業委員会の所掌事項に関して職務を適切に行うことができる者のうちから、市町村長が議会の同意を得て任命します。
任命要件としては
・原則として、認定農業者などが農業委員の過半数を占めること
・農業委員会の所掌事項に利害関係のない者、中立委員が含まれること
・年齢や性別などに著しい偏りが生じないように配慮すること
・青年や女性の積極的な登用に努めるようになっています。
・任期は、3年となっています。
定数
定数は、次の区分に応じて、それぞれの範囲内で条例によって定めます。
・農業者数が1,100人以下または、農地面積が1,300ha以下
14人、推進委員を委嘱しない場合は27人
・農業者数が6,000人超、かつ農地面積が5,000ha超えの場合
24人、推進委員を委嘱しない場合は47人
(2)推進委員
・農地などの利用の最適化の推進に熱意と識見がある者のうちから、
農業委員会が委嘱します。
・任期は、農業委員の任期満了の日まで。
・定数は、農業委員会の区域内の農地面積の100ヘクタールに1人の割合で、条例で定める。
ただし、農業委員会の区域内の地理的条件などが農地などの利用の最適化の推進が困難なものと判断される場合は、市町村が必要と認める数を加えることが可能です。
(3)農業委員と推進委員
(農業委員)
・総会や部会に出席、審議をして、最終的に合議体としての決定を行います。このことに加えて、現場活動を行うことも可能です。
・農地利用の最適化の推進に関する指針を決定します。
・農地の権利移動の許可、農用地利用集積計画を決定します。
・農地転用許可にあたり、具申すべき意見を決定します。
・農地利用の最適化の推進に関する施策について提出する意見を決定します。
(農地利用最適化推進委員)
・担当区域で現場活動を実施します。
・推進委員として意見を述べます。
・指針を踏まえて、現場活動を実施します。
・推進委員として意見を述べます。