伝統的な農業以外の最近の農業スタイルは、例えば、次のものがあります。
・有機農業
合成化学物質を使わない栽培、環境への悪影響を減らします。
・都市農業
都市での農業で、空き地や屋上などの小規模なスペースを利用します。
・ハイテク農業
最新技術や機器を利用して、効率的な農業を行います。自動化農業機器やドローンを使って作物の管理や監視を行います。
・持続可能な農業
環境への悪影響を最小限にして、生産を維持継続させます。土壌の健康維持や、自然資源の効率利用を考慮して農業をします。化学肥料、化学農薬を減らして生産します。
畑で作物を作る「畑作・輪作」
輪作は、農業の方法の1つで、同じ土地に別の種類の農作物を何年かに1回のサイクルで農業をする方法です。
1種の作物を育て続けるのが単作で、同時に複数の作物を育てる方法が混作であり、交互に違った作物を同時に育てるのが間作となります。
単作栽培は、一種類の作物に適した害虫が増えるために、面積の大きな単作栽培では、多量の特定の害虫が増えてしまい害虫が大発生につながることがあります。
混作、間作や輪作などであれば、空間的、時間的にも単純な環境にならず、大量発生する昆虫も防ぐことができます。
作物を周期的に変えることで、土壌の養分や微生物がバランスよくできて、収穫量や作物の品質が上がることが期待できます。
輪作パターンは、養分の要求が強いと言われている、ほうれん草、じゃがいも、キャベツ、トマトや穀類などをつくることが多くなります。
その後、人参、玉ねぎなどの根菜類などをつくります。 さらに、えんどう豆、そら豆などマメ科をつくります。
自然に近い場所で栽培する「露地栽培」
露地栽培とは、屋外にある畑で設備などをできるだけ使わずに、作物を栽培することです。自然環境をできるだけ活用します。
露地栽培は、施設栽培と比べて費用を削減できます。費用がかからないので、農地を拡大しやすくなります。施設栽培と比べ同じ予算でも、広い作付け面積となります。
施設栽培の場合、地震や台風、大雪などの災害では、施設や設備に被害が及ぶと修繕費用がかかり復旧までに時間を要します。
露地栽培であれば、自然災害の被害を抑えることができます。
施設栽培は、年間を通して安定した収量が見込めますが、露地栽培の場合は、多品目栽培ができます。露地栽培では、旬の栽培作物を変えることが多くなり、多品目栽培が主流です。
露地栽培は、施設栽培のようにマニュアル化がむずかしく、農家の経験と知識が必要となります。季節の旬に作物を変えて生育させますので、多くの経験と知識が必要になります。
季節ごとの天候の変化なども、最適な栽培手法が必要になります。天候の不順や病害虫などの影響を受けやすくなります。
太陽光パネルの下で育てる「ソーラーシェアリング」
1.ソーラーシェアリングとは
ソーラーシェアリングは、再生可能エネルギーの普及やエネルギーの地産池消を目指して、営農を続けながら、太陽光で発電を行う方法です。営農型太陽光発電とも言います。
農林水産省が「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備などについての農地転用許可制度上の取扱いについて」という通達が出して、全国的に採用する動きが広がっています。
農地に支柱などを立てて、その上に太陽光パネルを設置します。太陽光を農業生産と発電の両方で利用します。営農を続けたまま、農地の上の空間を有効活用することで電気を生み出し、農業経営を安定させます。
農地の上に太陽光パネルを設置、農業と太陽光発電の両方を行うので、土地を立体的に利用できて効率的に収益をあげます。
耕作地の上の約3mにパネルを設置、作物とパネルで光を有効活用します。パネルで遮る太陽光は、約30%で、作物の生育に問題がないように設計します。高さや幅にも十分な間隔をつくって、農業機械の邪魔にならないようにします。
栽培している作物にもよりますが、ソーラーパネルの陰によって作物の出来がよくなるものもあります。しいたけなどの栽培では、遮光ネットを付け、日陰と湿気を増やし、栽培環境をつくる場合などです。ソーラーパネルが屋根になり、適度に日陰をつくり、作物の生育がよくなる場合もあります。
2.日陰での植物の生育
植物は、これ以上の光合成はしなくなるという光飽和点というのがあります。一定の光があれば作物は育ちますが、強すぎる太陽光では、作物の成長で使いきれないという光量が出てきます。
ソーラーパネルで太陽光を遮って作物が育たないとの心配は、作物の種類にもよりますが、ほとんどの作物であてはまりません。
1日1~2時間の日照で育つ陰性植物もあれば、1日6時間以上の直射日光を好む陽性植物もあります。栽培する作物に合わせ、パネルの角度を変えて、日陰でできる悪影響をなくします。
過剰な日光や気温の暑さは、むしろ植物にストレスを与えるため、作物に合わせて適度な日陰をつくりだす方法が、成長を促進するとされています。作物には不要な光をパネルで電気に変えているので、作物の成長を妨げません。
3.ソーラーシェアリングに必要な手続
農林水産省から公表された「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備などについての農地転用許可制度上の取扱い」に基づき、農地一時転用の許可申請等の手続が必要になります。
農地一時転用の許可を申請する場合、事前に太陽光発電事業を開始するための手続である産業省の「事業計画認定の申請」や電力会社との「電力受給契約の申込み」をしておく必要があります。
自治体によっては、農地一時転用許可の手続として、ソーラーシェアリングは営農の継続を前提としているため、営農に支障がないことが条件となる場合があります。
例えば、農地の単収が、同じ年の地域の平均的な単収と比較して約2割以上の減少がないこと、農作物の品質が落ちないことなどです。
市町村の農業委員会に、営農型発電設備の設計図、営農計画書、営農への影響の見込みと根拠となるデータなどを提出する必要があります。営農開始後は農作物の状況に関して毎年の報告等も必要となります。
ソーラーシェアリングの一時転用では、設置するための基礎部分である支柱について許可をもらう必要があります。2013年から第一種農地、青地や農業地区域内農地も一時転用での設置が可能になっています。
従来は、一時転用期間が一律3年とされ、3年毎の更新時に申請を行う必要がありましたが、特定の条件を満たした場合、この期間が10年に延長されました。
通常の太陽光発電の申請するほか、各自治体の農業委員会の許可が必要となります。市町村毎に申請の内容や基準が変わってきます。
一時転用に必要な条件は次のとおりです。
農地を利用するためソーラーシェアリングの条件には、次の規定があります。
・撤去可能な設備であること
・必要最小限かつ適性であること
・作物に適した日照の量を確保できていること
・農業関連機器が利用可能になっていること
・設備の撤去費の支払いが可能であること
観光農園や市民菜園
特定農地とは、農地を農業者以外の者に貸付けることです。 一定の要件を満たす場合に認められて、市民農園などを開設や運営する場合に利用されています。
特定農地貸付では、高齢などによって、農業経営を行えなくなった遊休農地を活用できます。 農地を区画割りして、利用者に貸付ができます。農業経営をしながら、市民農園の開設もできます。
特定貸付けでは、相続税の納税猶予の適用を受けている農地などを農業経営基盤強化促進法に関係する一定の事業のために、貸し付けることができます。相続税や贈与税の納税猶予の対象地について、農業経営基盤強化促進法等に基づく事業による貸付である特定貸付が行われた場合、納税猶予は打ち切りになりません。
第2種農地は、鉄道の駅が500m以内にあるなど、市街地化が見込まれる農地や生産性の低い小集団の農地です。農地以外の土地や3種農地に立地が困難な場合などに許可されます。
第3種農地は、鉄道の駅が300m以内にあるなど、市街地の区域や市街地化の傾向が著しい区域にある農用地で、農用地以外でも原則許可されます。
生産緑地法が改正されて、直売所や農家レストランなどの施設が生産緑地地区内に設置可能になりました。
生産緑地地区内で許可を受けて建築できる施設としては、ビニールハウス、集荷倉庫、農機具などの倉庫などに加えて、次の施設が追加されました。
農作物などを原材料に使用する製造、加工施設
農作物などや製造や加工をした商品を販売する店舗、直売所など
農作物などを材料として使用する飲食店、農家レストランなど
用件としては、上記施設の敷地を除いた生産緑地地区内の土地の面積が500平方メートル以上であること。
上記の施設を設置する敷地面積の合計は、生産緑地地区内の面積に対し、10分の2以下であること。
上記施設の設置管理者は、当該生産緑地にかかわる農林漁業の主たる従事者であること。
製造・加工施設は、地域内農産物等を主たる原材料として5割以上を使用する施設であること。
直売所などは、販売するもののうち、50%以上を地域内農産物などやこれらを主たる原材料とする製造や加工品を販売する施設であること。
農家レストランなどは、地域内農産物などを主たる原材料として5割以上使用した料理を提供する施設であること。
設置にあたって生産緑地法に基づく許可を受ける必要があります。用途地域の制限などで、その他の法令の基準により設置できない場合もあります。
1.市民菜園
市民農園は多種多様で、料金もサービス内容もいろいろあります。自治体や農家が運営者となっている場合は、利用料は安いところが多くなります。
しかし、行政の運営する農園は、その自治体の住民でなければ利用ができなかったり、数年おきに、抽選などで利用者が選ばれる場合も多くあり、定着した野菜づくりはむずかしくなります。
2.観光農園
観光農園は、レジャーで農村を訪れる人に、接客や収穫体験などのサービスを提供して、生産した農産物を販売したり、所得や雇用の増加を期待して運営される観光農業経営です。
観光農業の仕事の内容としては、体験受付の対応や売店での接客となります。団体客も多く訪れる体験農園などがあります。予約の受付の管理、農園で採れた野菜や果物、それらの加工品などの販売店を運営しています。
観光農園のメリットとしては、農業体験を通じて、農園や農産物のファンをつくることができて、収穫、梱包する作業の手間が省けて、傷ものや規格外の作物を売ることや加工品などの販売もできることです。
デメリットとしては、設備投資が必要になったり、接客や予約管理の人件費が必要になることです。
観光農園は、コロナ前までは拡大をしてきました。2014年度の約364億円から2018年度の約403億円へと増加していましたが、2019年度から減少し、2020年度は2018年度から比べると約25%減少しています。
体験型の市場規模としては、国土交通省の観光庁観光資源課が公表した「地域の自然体験型観光コンテンツ-充実に向けたナレッジ集」によりますと、アドベンチャーツーリズムの市場規模は2016年において約49兆円でしたが、2023年には約147兆円まで拡大すると予想しています。
アグリツーリズムは、娯楽やレクリエーションを目的とした農場活動と観光を組み合わせた活動ですが、農業体験の市場規模としては、アグリツーリズムの市場規模として、2019年に424億6030万米ドル、2021年から2027年にかけて13.4%の年平均成長率となり、2027年には629億8260万米ドルになると予測されています。