農地法第4条
農地法第4条は、農地を転用するための手続きについて規定しています。農地を住宅地や工業地などの非農業用途に転用する場合、農地法第4条に基づく許可が必要になります。
貸住宅、道路、駐車場、植林などの用途に農地を転用する場合、農地法第4条の許可を申請する必要があります。
農用地を転用する場合は、地域の農業や農村の保全を考慮しなければならず、十分な審査が行われます。
農地法第4条の許可申請は、市町村などの地方自治体の農業委員会に申請することになります。
詳細な手続きや必要書類は、所在地の自治体の農業委員会などに問い合わせることができます。
農地法第4条と5条
1.農地の転用許可が必要な場合と許可権者について
農地を農地以外に利用する農地転用には、農地法4条または5条に基づいて、県知事または農林水産大臣の許可を受けることになります。
(1)第4条
自分の農地を転用する場合は、申請者は、転用を行う者(所有者)であり、許可権限者は県知事または農地が4ヘクタールを超える場合は農林水産大臣となります。
(2)第5条
事業者等が農地または採草放牧地を買って、もしくは借りて転用する場合は、申請者は、売主(農地所有者)と買主(転用事業者)の両方で、許可権限者は県知事または農地が4ヘクタールを超える場合は農林水産大臣となります。
(3)転用の許可権者
転用する面積によって、知事許可と大臣許可に分かれます。
農地の転用に関する許可の事務の運用が、県知事から市やその農業委員会になっている地域があります。
たとえば、岩手県は、2ヘクタール以下のものに限って、盛岡市、大船渡市、陸前高田市、二戸市に
所在する農地の転用は、知事に代わって、市長または農業委員会あてに許可申請することになります。
その他の市町村は、農地転用の面積が同一の事業目的に4ヘクタール以下の場合、県知事の許可が必要になります。
2ヘクタールを超える場合は、知事は農林水産大臣と協議します。
知事に申請する場合、市長または市農業委員会に申請する場合であっても、申請書の提出先は、市町村の農業委員会になります。
農地の耕作面積が、4ヘクタール以上のものについては、農林水産大臣の許可が必要となります。
(4)4条と5条の許可申請の違い
・4条で申請の場合は、自分で所有する農地を転用する場合には、農地法4条の許可を受ける必要があります。いわゆる自己転用の場合です。
自分の農地を、自分の住宅地として、利用するなど権利の移転や設定がない農地転用ということです。
・5条で申請の場合は、農地の転用と農地の権利移転や設定を同時に行う場合です。この場合は、農地法5条の許可を受ける必要があります。
自分の農地を、売るか貸したりして、宅地にする場合などで、その他、他人の所有する田畑を購入して、工場を建てる場合などです。
(5)農地の一時転用
農地を仮に一時的に、転用する場合も、許可が必要となります。
一時的に仮設の工事事務所をつくったり、土石採取場にしたり、仮設資材置き場にする、 作業用宿舎をつくるような場合です。
仮設であっても、農地を利用する場合には、許可が必要になります。
(6)農地の種類
農地転用をする場合に許可が必要となる農地は、田畑だけではありません。すべての農地が農地転用許可の対象となります。
田、畑、樹園地などの農地や採草放牧地も含まれています。
登記簿上、地目は農地でなくても、現況として農地として使用している土地であれば、農地転用するときは、許可を受けなければ 農地以外で利用することはできません。
登記地目が農地であっても、現況は農地でなくて、今は、耕作されていなくても、転用するのであれば、許可が必要になります。
農地法の適用を受けるかどうかの判断は、現状の現況から農業委員会が判断することになります。
(7)農地転用の立地基準
・第3種農地 都市的整備がされた区域内の農地、市街地にある農地の場合
原則 許可
・第2種農地 農業公共投資の対象となっていない小集団の生産力が低い農地、市街地として発展する可能性のある農地 第3種農地に立地困難な場合 許可
・第1種農地 集団農地(10ヘクタール以上)農業公共投資対象農地、生産力の高い農地
原則 不許可
・甲種農地 市街化調整区域内の農業公共投資後8年以内農地、集団農地で高性能農業機械での営農可能農地 原則 不許可
・農用地区域内農地 市町村が定める農業振興地域整備計画にて農用地区域とされた区域内の農地 原則 不許可
(8)農地転用の一般基準
農地の効率的利用の確保の観点から転用の可否が判断されます。
次のいずれかに該当する場合、許可されません。
・転用の確実性が認められない場合
他法令の許認可の見込みがない場合や関係権利者の同意がない場合など
・周辺の農地への被害の防除措置が適切でない場合
・一時転用の場合、農地の現状回復が確実と認められない場合
なお、立地条件にたとえ適合していても、一般基準のいずれかに該当するときには許可されなくなります。
(9)その他注意事項
・市街化調整区域内では、都市計画法や農業振興地域の整備に関する法律の規制がありますので、農地転用が可能かどうか確認したほうがよいでしょう。
(10)農地法4条、5条の許可が不要とされる場合
・国や地方自治体が農地を転用する場合
・土地収用法その他の法律で収用するか、または、使用した農地を転用する場合
・市町村が道路、河川など土地収用法対象事業に係る施設に供するための転用
(11)農地転用許可申請に必要な書類
市町村によって、若干違う場合があるので、事前に農業委員会などで確認願います。
・所定の様式の申請書
(4条と5条では申請書の様式が違います)
・添付書類
地方自治体、市町村によって異なる場合があります。一般的に次の書類を添付することが多くなります。
登記事項証明書:全部事項証明書
公図の写し:法務局備え付けで字限図含む
地籍図・地図:転用する農地の位置、面積、形状などが記載された地籍図と、周辺環境がわかる地図
転用候補地の位置および付近の状況を表示する図面
住民票:農地のある市町村区域以外に住所がある場合
現況写真:転用する農地の現況を示す写真が必要です。
法人登記簿謄本及び定款又は寄付行為(法人申請の場合)
事業計画書:転用する農地の面積が5000平方メートル以上の場合
転用候補地に建設しようとする建物または施設の面積、位置及び施設物間の距離を示す図面
同意書:所有権限以外の権限に基づいて申請する場合、所有者の同意書。地上権、永小作権、質権、賃借権に基づく耕作者がいる場合には、耕作者の同意書
申請する農地が土地改良区の区域内の場合は、土地改良区の意見書
取水、排水について水利権者、漁業権者等の同意を得ている場合には、それを証する書面
全事業費が1,000万以上の場合は、金融機関等の証明書
委任状、行政書士に、申請に関する権限を委任する場合
農業委員会への意見聴取の結果:農地転用の計画が地域に及ぼす影響を考慮し、農業委員会で意見聴取を行った結果
(12)転用許可なして転用した場合
農地の転用違反となります。
違反転用が行われた場合は、都道府県知事等は、現状回復などの措置を講じます。
違反転用に対しては、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金、法人は1億円以下の罰金となり、違反転用における現状回復命令違反については、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人は1億円以下の罰金が課せられます。
無断転用の者だけでなく、違反農地にかんして工事などを請け負った業者もこれらの命令の対象となります。