農業経営規模の拡大をしたいという希望があって、農地を借りる場合などは、貸借農業経営基盤強化促進法を利用することで、可能な場合があります。
拡大したいという意欲ある農業者と、高齢などの事情で耕作できない所有者との間で、農地の貸借の権利、利用権などを設定して、農地の有効利用と農業振興を図っています。
農業経営基盤強化促進法とは
農業経営基盤強化促進法とは、効率的で、かつ安定的な農業経営を育成するという目的を実現するために、農業経営の規模拡大、生産方式や経営管理の合理化などをすすめていく意欲のある農業経営者、認定農業者を総合的に支援するために、国が平成5年に制定したものです。
1.農業経営基盤強化促進法の基本方針
育成すべき効率的で、かつ安定的な農業経営を営む者の指標を示して、経営改善を図ろうとする者への支援のあり方などの自治体の基本的な考えを示すため、農業経営基盤の強化の促進に関する基本方針を策定しています。
2.認定農業者制度
農業者に対して、市町村が策定する農業経営基盤強化促進基本構想に示された農業経営の目標に向けて、農業者の創意工夫に基づいて、経営の改善をすすめようとする計画を市町村等が認定して、これらの認定を受けた農業者に対して重点的に支援の措置を講じようとするものです。
令和2年4月から複数の市町村で農業を営む者が経営改善計画の認定を申請する場合には、営農区域に応じて、都道府県または、国が農業経営改善計画の認定を一括で行うことになりました。
現時点で既に特定の市町村で認定を受けている農業経営改善計画の有効期間中は、あらためて、都道府県または、国への認定申請を行う必要はありません。
農業経営基盤強化促進法による農地の貸借の利用権設定
農業経営規模の拡大を図りたいという意欲ある農業者と、高齢や仕事などの事情などで耕作できない農地所有者との間で、農地の貸借の権利、利用権などを設定して、農地の有効利用と農業振興を図ることを目的とする事業になります。
農地を農地として貸借する場合は、農地法第3条の規定により、農業委員会の許可を受ける必要があります。
農業者としては、貸した農地が返ってこないのではという不安とか、離作料を支払う必要があるのではなどという不安があることから、農地所有者である貸し手が消極的になることもあり、農地を借りて規模拡大を図りたい農業者にとっては、農地が借りにくい状況がありました。
農業経営基盤強化促進法による農地の貸借では、こうした貸し手と借り手の不安を解消して、規模拡大を図りたい意欲ある農業者を支援しています。
農業経営基盤強化促進法は、1980年に公布された法律です。 昭和55年法律第65号。制定時の題名は、農用地利用増進法であり、1993年の改正で、現行の題名に改題されました。
1.利用権設定の特徴について
・市町村内の農地が対象となります。ただし市街化区域は除かれます。
・農地法上の許可の要件となっている下限面積の条件はありません。
・市町村が農業委員会の決定を経て、農用地利用集積計画を作成や公告することによって、農地の貸借契約の効果が生じます。
2.農地所有者である貸し手のメリット
契約期間の満了により、自動的に貸借関係は終了して、貸し手に確実に農地が返還されますので、安心して農地を貸すことができます。
農地の所有者である貸し手は耕作者である借り手に対して、離作料を支払う必要はありません。
共有者のいる農地や所有者が亡くなられている農地については、共有の持ち分の2分の1を超える同意を得た共有者や相続関係人が、貸し手として利用権の設定をすることができます。ただし契約期間が20年以内の場合に限られます。
3.耕作者である借り手のメリット
借り手は、農業経営の規模の拡大を図ることができます。
利用権の設定期間中は、安心して耕作ができるために、借り手は安定的な営農計画を立てやすくなります。
新規就農者については、利用権ではなく、原則として農地法第3条許可申請に基づく賃貸借権や使用貸借権の設定を行います。
4.利用権設定の書類について
・貸し手と借り手が同意して、申出書兼同意書を提出する必要があります。
・貸借期間や賃借料などの契約内容は、貸し手と借り手が相談の上、決定することができます。
・申出書や同意書や、その他必要な書類は、このホームページなどからダウンロードできるところがほとんどです。
5.利用権の更新について
・契約期間の更新時期になりましたら、受付期間の前月に貸し手と借り手の両方に、農業委員会から期間満了の通知が送付されます。もし、更新を希望されない場合は、手続きなど は不要です。
・利用権設定によって、後継者に農業経営を移譲した農業者年金の経営移譲年金を受給している方は、更新の手続きをします。
6.解除条件付きの利用権設定について
耕作に必要な農作業に常時、従事していると認められない人や、農地所有適格法人以外の法人については、解除条件付きでの設定となります。
7.農業経営基盤強化法第18条
農業経営基盤強化法第18条とは、農地の貸借について
農地を耕作目的で権利を移転または、設定する場合には、農地法第3条による許可が必要になりますが、市町村が農業経営基盤強化促進法に基づいて、農用地利用集積計画を定め公告することによって、賃借権等の権利を設定することができるようになります。
農地転用許可と農地売買における実務上の重要ポイント
農地転用許可は、単に申請書を提出すればよいものではなく、農地法に基づく厳格な許可基準を満たす必要があります。特に農地売買を伴うケースでは、所有権移転と転用許可が密接に関係するため、「農地購入後に転用する」という順序ではなく、許可取得を前提とした契約条件(停止条件付き売買契約)を設定することが極めて重要です。これを怠ると、農地購入後に転用できず、利用目的が達成できないリスクがあります。
また、市街化区域と市街化調整区域では取扱いが大きく異なります。市街化区域では届出で足りるケースがある一方、市街化調整区域では原則として許可が必要であり、許可のハードルも高くなります。農地売却を検討する際も、当該土地の区域区分によって売却可能性や価格に大きな差が生じるため、事前に農業委員会や専門家へ確認することが不可欠です。
さらに、地域ごとに運用が異なる点も見逃せません。同じ農地転用であっても、自治体や農業委員会の判断基準や運用方針により許可の可否が変わることがあります。農地売買や農地購入をスムーズに進めるためには、事前相談を行い、必要書類や許可見込みを把握することが成功の鍵となります。行政書士などの専門家を活用することで、手続きの正確性とスピードを確保できます。
- Q農地購入後に農地転用許可を申請すれば問題ありませんか?
- A
原則として推奨されません。農地転用許可が得られない場合、目的の利用ができなくなるため、農地売買契約は「許可取得を条件」とするのが実務上の基本です。
- Q農地売却をする場合、必ず許可が必要ですか?
- A
農地売却の内容によります。農地のまま売買する場合は農地法第3条許可、転用を伴う場合は第5条許可が必要となります。ケースごとに判断が異なります。
- Q市街化区域の農地は自由に転用できますか?
- A
市街化区域内であれば原則として届出で足りますが、すべて自由というわけではなく、他の法令(建築基準法や都市計画法など)の規制を受ける点に注意が必要です。
- Q農地売買の価格は何で決まりますか?
- A
農地としての価値だけでなく、転用可能性や立地条件によって大きく変わります。特に農地転用が可能な土地は、農地購入の需要が高まり、価格が上昇する傾向があります。
- Q農地転用や農地売買は自分で手続きできますか?
- A
法的には可能ですが、書類作成や許可要件の判断が難しく、不許可リスクもあるため、行政書士などの専門家に相談することが望ましいです。結果的に時間とコストの削減につながるケースが多いです。


